賭け麻雀は点ピンまでOK?について考えてみる

 

1. はじめに 

 黒川検事長が賭け麻雀で辞任した。
検察No.2と超高級取りの朝日新聞記者で卓を囲むとなると、凡人にはとても手を出せない高レート麻雀なのだろうか(産経記者の給料についてはよく知らない)。

 なんて思っていたら、蓋を開けると点ピン(1000点100円換算)だったとのこと。「むこうぶち」のような世界を想像していたから、肩透かし感が否めない。ウマ(順位点)が30-90とかだったらピンでもそこそこの額が移動するとは思うけど、夜通しやって5万円勝てればかなり良いほうだろう。パチンコの方がよほど大きな額が動く賭博だ。

f:id:natu_atui:20200524192058j:plain

高レート麻雀の代名詞


 実態として、フリー雀荘ではノーレートの店舗なんて数えるほどしか無いし、オンレートの麻雀は黙認状態である。とはいえ、法律の建前上、検事長が金銭を賭けて麻雀を行ったことを認めた以上、賭博罪でお咎めがあるのだろう。

 なんて思っていたら、法務省が黒川検事長への処分を決定するにあたり出した見解が下記の通り。

「旧知の間で、レートはいわゆる点ピン。具体的に申し上げますと、1000点を100円と換算されるものでございまして、もちろん賭けマージャンは許されるものではありませんが、社会の実情をみましたところ、必ずしも高額と言えないレートでした。(法務省・川原隆司刑事局長/5月22日衆議院法務委員会での答弁)

答弁の様子はこちら。

www.youtube.com

 

 

 黒川検事長が受けた処分は「訓戒」。

はっきり言ってただの注意レベルで、痛くもかゆくもない処分だ。

(実際、6,000~7,000万円といわれる退職金は満額支給される見込み)

黒川検事長が立件、起訴されないのであれば、一般市民が点ピンで麻雀を

打つことも自ずと認められることになる。

 

ちなみに、刑法に定められている賭博罪の条文は下記の通り。

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。(刑法第185条) 

 重要になるのは、「ただし」以降のいわゆる但し書きで、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」となっている。

ひらたく言うと、麻雀の勝敗結果によって昼ごはんをおごったり、パチンコの景品にあるようなお菓子のやり取りなら許されるという感じだろうか。

ただ現行の法解釈だとレートによらず現金のやり取りは認められていない。

つまり、点ピンの賭け麻雀は法律の条文、解釈的にはアウトだが、社会の実情としては認められる、非常にグレーなゾーンであると法務省が認めたことになる。

 ちなみに、タレントの蛭子能収が逮捕されたときのレートは点リャンピン。1000点200円換算である。この100円の差に逮捕される、されないほどの大きな隔たりがあるとは思えないが、ひとまずそういうことになっている。

余談だが、なぜ人が賭け麻雀に熱中してしまうかについては、別記事にまとめたのでこちらもご覧いただきたい。

natu-atui.hatenablog.com

2. 現行刑法は時代遅れである

 ここまでの流れを踏まえて言えるのは、現行の賭博罪が時代遅れで、社会の実情に全くそぐわないということだ。現在、日本で認められている賭博の競馬、競輪、競艇、パチンコと麻雀はゲームの結果によって金銭が動くという点でなんら変わらない。

であるなら、麻雀も点ピンまでなら合法と法律で決めてしまうのが、現在のグレーゾーンを解消するのに必要なことだと思う。それができないなら、黒川検事長刑事罰を受けるべきだ。

 

 仮に合法となった場合に、問題としてあがってくるのは、賭博によって動いたお金が反社会勢力に流れるのでは?というあたりだと思うが、これもオンレート雀荘の営業を許認可制にすればよい(マンションでの高レート麻雀などはやろうと思ったらどちらにせよ防げないし、逮捕するべき)。セット1回の料金を若干上げて、税収にすれば、国のお財布的にもメリットがある。ゲームバックのない雀荘でメンバーとして生計を立てている人からすればセット料金値上げは死活問題かもしれないが、点ピン合法化による麻雀のイメージ向上、裾野の拡大などを考えると、料金を上げることのメリットの方が麻雀業界としては遥かに大きいだろう。

 ちなみに、各公営ギャンブルの所轄官庁は下記の通り。

競輪:経済産業省 オートレース経済産業省

競艇国土交通省 競馬:農林水産省 toto文部科学省

競輪と競馬はなんとなく分かるけど、国土交通省競艇の所轄官庁なのは正直意味が分からない。天下り先として各省庁が受け持っているのであれば、麻雀も法務省にケツを持ってもらえば良い。黒川氏のような熱い麻雀ファンが天下ってくればきっと業界のために頑張ってくれるはずだろう(月に2~3回卓を囲み、緊急事態宣言下でも打ちたいほどの人だから、よっぽど麻雀が好きなんだと思う)。

3. 麻雀業界の努力不足

 今回起きた事件は、極論を言うと麻雀業界が今まできっちりと合法化に向けたロビー活動を行ってこなかったことに起因すると思う。パチンコは公営ではないけれど、国会議員や警察庁にロビー活動を行い、三店方式を生み出し、一応合法ということで堂々と賭博を行っている。もし麻雀業界がロビー活動を行い、もっと早く点ピンまでならOKという言質を取り、法律的にも合法と認めさせていれば、今のもやもやとした状態は発生していない。

 Mリーグ(プロスポーツ化を目指す競技麻雀リーグ)が発足して、スポンサー企業を募り、Mリーガーがノーレート雀荘で麻雀教室を行うなど、懸命に業界のクリーン化に動いているけれど、この流れも正直的外れと感じる。

 卓越した技術を持つプロ達が、リーグ優勝を目指し、しのぎを削りながら清廉に競技麻雀を行うのを見る分にはとても楽しい。ただ、多くの麻雀ファンは別に競技麻雀がやりたい訳ではないのである。オンレートで適度に射幸心が煽られる娯楽としての麻雀が打ちたいのだ。ここに大きなかい離がある状態では、これ以上の麻雀業界の拡大は望めないように思う(天鳳で十段目指してます、みたいな人にとってはそれ自体がモチベーションになっているからまたちょっと違うんだけど)。

 巷で噂の麻雀警察もこの件について熱く語っているので動画を貼っておく。

www.youtube.com

 

 今回の黒川氏の行動を擁護する気は全くないけれども、この機に麻雀という娯楽について、一歩深く踏み込んで考えてみるべきじゃないだろうか。

いち麻雀ファンとしては、合法になるにせよ、ならないにせよ、白黒はっきりつけてほしいところである。
natu-atui.hatenablog.com